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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2

 やがて――。


「さて、佐伯さん。あなたの最初の所持金の少なさが祟り、今回あなたがレイズをすれば、次回にはコールもできずに、ドロップしか手が無くなりますが、今のうちに借金をして増資しますか?」


 ひぃぃぃぃ!!

 ハル兄、金が……っ!!


「借金は、俺の勝利の女神が嫌う。だからこのまま行く。レイズ」


 1800万が、綺麗になくなってしまった‼︎


「ふうん……。どんな言葉も事態にも、あなたは焦らず揺らがないんですね。面白い、その見事な自制心のたまもの……強がりとはったりに敬意を示し、あなたの勝利の女神の加護とやらを見せて貰いましょうか」


 そして愉快そうにアダルトナツは言ったんだ。



「……ドロップ」


 降参、と。




「ドロップ?」


 ハル兄が訝しげな声を出した瞬間、アダルトナツはカードを表に返す。


「ええ、元より勝てるような札を揃えていませんし」


 あったのはワンペア。

 一番低い役のくせに、それを悟らせずににこにこと余裕で、賭け金を吊り上げていたの!?


 それは、かなり度胸があるはったり男の証拠。



「あははははは。この勝負、貰った!!」


 狂ったように笑い出したのはぼったくりだった。

 勢いよくカードを台に叩きつけるように表に返せば――。


 え?

 ええええ!?


 台に置かれたのは、ハートで揃えられた連続数字。


 それは二番に高い役、ストレートフラッシュ。


 やけに自信があった理由がわかった。

 勝てないわけはない、強すぎる役だ。


 それが出来たのが偶然か否かは、もう今となっては関係ない。

 結果こそがすべてのポーカーにおいて、この役は強烈すぎた。


 ダークホースはぼったくりだったのか。


 やばい。

 これは本当にやばい。


 ぼったくりに勝つには、スペードの10~Aで揃えた奇跡の役……ロイヤルストレートフラッシュしかない。


 だけど、どう考えてもありえない。

 これはご都合主義の映画でも漫画でもなく、現実なんだ。


 5枚すべて入れ替えて、偶然それが完成できるはずがない。

 常識的にまったくありえない。



「佐伯さん、あなたの札は?」



 手札を見せることに、ハル兄は渋る様子を見せた。


 ああ、やっぱりハル兄は……負けたんだ。

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