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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 


 さらりと零れる茶褐色の髪。

 きめ細やかな白い肌。


 それは――。



「勝利の女神に、ひとときのお別れを」



 艶然と微笑むアダルトナツだった。


 その唇の熱さに柔らかさに、体にぞくりとした快感を感じたあたしは、びくびくとした電気が走ったような衝撃に思わず声を漏らし、そして彼を突き飛ばした。


「てめぇ――っ!!」


 ハル兄の拳をひらりとかわし、アダルトナツは言った。


「私のキスで、体の奥のもうひとりのあなたは、満足したでしょう?」


 満足。


 たしかに……とめどない欲は落ち着きを見せた。


 なんで?

 どうして?


「あなたは私と体の相性がいいんですよ。そこにいる彼よりも」

「ざけんなよ、てめぇっ!!」

「おおっと危ない。ふふふ、勝負に負けたんですからこれくらいの嫌がらせしてもいいじゃないですか。お見事でした佐伯さん。彼女を昂奮させるくらいの手腕、さすがの私もぞくぞくしてあなたに惚れそうになりました」


 ナツに似たその目に妖艶な光を宿らせて。


 そして彼は去り、あたしは――。


「腹が減った。シズついてこい」


 残り少なくなった肉だけを皿によそったハル兄につれられて、夜風が気持ちいいテラスに赴いた。
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