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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2


 そよそよとした夜風が、火照る身体に気持ちがいい。

 しかしそれでも冷めやらぬのは、ハル兄が伝える秘部の灼熱。

 次々と生まれるさざめく快感の波に飲みこまれて、夜の帳(とばり)に溶け合いそうな気になる。


 発熱しているのは、あたしの体なのか。

 ……それともハル兄なのか。



「ああ……いい、ああっ……ん、は、は……っ、んんっ、ハル兄……」


 上げられたままの片足が、ハル兄の温もりを求めて宙に泳ぐ。

 あたしの両手はもどかしく、ハル兄の髪の毛をまさぐっている。


 唯一ハル兄の温もりが感じられる足の付け根に視線を落とせば、淫猥な舌遣いで夢中になってあたしの花芯を貪るハル兄の姿があり、それを見ただけでもう気を失いたくなるほどに、ぞくぞくが止まらない。

 もっととせがんでくねくねと動く、あたしの腰が止まらない。


――赤の36。全てを賭ける。

――ロイヤルストレートフラッシュ。


 不敵に笑い、喝采を浴びたあたしの帝王。

 奇跡をなんなく自分のものとし、当然とばかりに超然と笑った帝王。


 今でも思い返す度に、心までもが震撼する。

 メスの本能が揺さぶられる。
 

 その、誰もが縛ることが出来ぬ美しき野獣の王が、今あたしに這いつくばるようにして、あたしの秘部を舌で奉仕している――。


 あぁ……。

 まるで夢心地――……。



「シズ……後から後から溢れるぞ。これも……俺のせいか?」


 甘やかな艶めいたバリトンが耳を犯す。


 ちゅるちゅると音をたてながら、ハル兄は時折熱い息を吹きかける。

 あたしを見遣るその瞳には、先ほど見たような陰鬱な昏さはなく、ただ激しい情欲の炎が揺れるのみ。


 それは捕食しようとするオスの上目遣いだった。

 それに捕らわれたあたしの子宮は、悦びにじんと痺れてくる。


「ん、ハル兄のせい。ハル兄が……あああっ、ぁんっ、ああんっ、こんなに……はぅぅぅっ、し、したの。気持ちいい……の……っ」


 息も絶え絶え。

 出てくるのは、快感に流される言葉のみ。

 抵抗の言葉など、口には漏れなかった。


 あたしの体は、帝王に愛でられることに悦んでいるんだ。

 ようやく愛して貰えた、と――。


 昨日、いや今朝まで……あんなに睦み合ったというのに。
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