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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 
 しかたがない。

 
 最早"恋人ごっこ"としての誤魔化しもきかない"素"を見せてしまったならば、あたしは素直に今の心境を伝えるしか出来ない。

 一番混乱しているのは、あたし本人なんだと。
 

「あ、あたしこのムードに酔っちゃって、ハル兄の甘々にやられちゃって、演技なのか違うのかもうわけわかんなくなっちゃたの。ごめん、ごめんなさい。あたし引き摺らないから、だからハル兄もあたしの馬鹿げた戯言を、本気にとらないで……」


「……兄貴として?」

「え?」


「今お前から出た"好き"は、身内に対する親愛の情?」


 眉間に皺を寄せて、威嚇のような鋭さを見せてくるハル兄。

 容赦ないね、聞き流してくれればいいのに。


 あたしは力なく頭を横に振った。


「……オトコとして」


 そう言った途端だった。


「!?」


 見開いたハル兄の目がきらりと瞬き……そこからなにかが、流星のようにつぅーっと頬に伝い落ちたのは。


「ハ、ハル兄?」


 それは幻想的にも思えた一幕。

 夜景に溶融してなくなってしまいそうな儚さと美しさを秘めていて。


 
「――っ!!」


 思わず息を飲んで魅入ったあたしの前で、突如天井を振り仰いだハル兄。


 反らされた上半身が、仄かに発光した。



 今の。

 ねぇ、今の……。


 泣いて……た?

 え、なんで?


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