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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘


「しーちゃん、大丈夫。サクラはこうした場面に遭遇するのは慣れきっているんだ。サクラの家が奔放的すぎて、親は無論、お姉さんもホテル代わりに家に彼氏ひっぱりこんでシてたの、よく見たり聞いたりして……それで女嫌いになっちゃってるんだ」

「お、女嫌い!? あたしへの態度は本当に嫌そうだけれど、他の子にはにこにこ……」


 そう、レストランではにこにこ……。


「そこがサクラの凄いところさ。自分のせいで周りの雰囲気が悪くならないようにと気を使い、完全に自分の感情を消して愛想笑いを向けられる。僕はそれができないから、無視しちゃっているけれど。僕、協調性がないから」


 愛想笑いができないナツは、こんなににこにこしているのに。

 愛想笑いができるモモちゃんは、あんなに嫌味で無愛想なのに。


 正反対の性格であるのに親友と互いに豪語するふたり。

 あたしと周囲に見せる顔がまるで違う、どこか似た者のふたり。

 
 モモちゃん……女嫌いだったんだ。

 あたしが知る限り、確かに姉のユリは家に彼氏を連れ込み、かなりなプレイで遊んでいたはずだ。あの頃、自慢げに話してくれたけれど、行為らしい行為をしたことがないあたしには、完全にちんぷんかんぷんの未知なる世界だった。

 小さいとはいえ、高いIQを持つモモちゃんならば、声や見た光景だけですべてを把握し、それに対して興奮するというより逆に興ざめしていったのかもしれない。

 あまりに生々しい、獣じみた行為に。

 

「モモちゃんを矯正してくれるような"彼女"は?」

「今まで僕もサクラも女の子と付き合ったことはないよ」


 だったら、モモちゃん……童貞!?


 いやいや、遊び相手ならいるのかもしれない。

 思春期の男の子は好奇心旺盛なものだから。

 しかもあれだけのスペックの上に、元副総長なら……、やんちゃな女の子だって寄ってきそうだし。

 
 イケメンで頭がよく女に騒がれただろうに、彼女なしの学生時代。

 ナツもモモちゃんも……まるで萎びたおじいちゃんみたいだ。

 平々凡々のあたしなんか、ハル兄にビッチ呼ばわりされるほど、彼氏作りに燃えていたというのに。


「でも……なんでサクラ、五分も聞いていたんだろう」


 ナツはスマホを握りしめたまま。
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