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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「モモちゃん、切り忘れたんじゃない? それともこっちが切るまで待っていたとか」

「待つって、なんのために?」

「昔頻繁にいたずら電話かかってきたことがあってね。"お嬢さん、今日のパンツは何色ですか~?"から始まる、とかく卑猥なことばかり言う電話を放置しておくとね、相手は反応がなくて虚しくなるみたいで……無言になって勝手に切れるのよ。電話代を奪い精神的ダメージを与える、地味な仕返し。

きっとモモちゃん、新手のいじめだと思って、その方法で放置してたのよ。で五分後、あたし達が動いて切っちゃった……と」


 名推理とばかりにあたしは胸を張るが、ナツはあまり納得していないように、やるせなさそうなため息をついた。


「放置されていたのならいいんだけれど。サクラだろうと聞かせたくないもの。あんなに可愛いしーちゃんの啼き声」


 ちろりとあたし妖艶な流し目で見たナツ。


 そしてナツは、身を屈めてあたしの耳もとで囁く。


「えっちで可愛い……しーちゃんの喘ぎ声」


 吐息混じりの甘やかな声で、情事を思い起こさせるように。



「いつでも僕は……その声を聴いていたいよ、今でもね」


 そしてねっとりとあたしの耳を舌でなぶる。

 思わずぞくりとして、身震いをしながら声を上げてしまった。


「ん……。しーちゃん可愛い。もっと啼かせていい?」


 しかしナツは、すぐにはっとしたように頭をぶんぶんと横に振った。


「ああ、駄目だ。せっかく抜いてきたのに、このままだと本当にエンドレスだ。やめやめ。しーちゃんをもっと愛したいけど、今はやめやめ」

 ナツはぶつぶつ言いながら、自分の両頬を両手でぽんぽんと叩いていた。



 ~♪


 そして鳴り響く愛の賛歌。



「サクラからだ!」




 この時、あたしもナツも知らなかった。

 とっくの昔に、目的の本は……その場所にはなかったということが判明していたことに。


 そして――。

 こちらから通話してしまった5分間、モモちゃんは放置ではなく、あたしとナツの情事の声を硬直しながら聴いていたことに。


 そして今、電話をかけるまでに時間がかかったのは、体の火照りと顔の赤さを鎮めるのに、苦労していたということに。


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