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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 



 ◇◇◇



「……なんだ」

「い、いえ……」


 あれから医務室に来たモモちゃんと、合流したあたし達。


 本がなかったという事実を聞いて衝撃を受けるよりは、モモちゃんがあの電話を聞いていたのかという方が気になって仕方が無い。

 ナツは至って普通に接しているが、どうしてもあたしはちらちらモモちゃんの反応を窺ってしまい、もじもじ。


 放置して聞いていないだろうとナツに言いつつも、本人を目の前にしたら、"もしも"の羞恥が離れない。



「しーちゃん、恋する乙女みたいで駄目! 僕を見て!」


 するとナツのほっぺたがぷっくり膨らんで、あたしをぎゅっと抱きしめてモモちゃんへの視線を体で遮ってくる。


 モモちゃんは普通だった。

 どこからどう見ても、いつも通りのクソメガネだ。


 変わらず上から目線の冷ややかな目を、メガネのレンズ越しにきらりと光らせて、メガネを指でくいくい。

 理知的な冷ややかな美貌が、冷たすぎて痛いほど。

 さっきまで親交を深めていたというのに、この30分強の間で、なんだか腹立たしいクソメガネ度合いが上昇した気がする。

 モモちゃんやめてクソメガネの呼称に戻した方がいいのかな。


 こんな態度がとれるのは、きっと聞いていなかったのだろうと思うことにした。

 19歳の健全な男が、きゃっきゃうふふ以上の成人指定の声を、5分も聞いていてこうならば、この男はかなりのサイボーグ野郎だ。


「――で、本がないのもおかしいと思い、とりあえず司書に聞いたり、蔵書検索システムで調べたりしてみた。まあタイトルがわからないから、結果は出ない。そこでふと思った。丁度あの位置は監視カメラがついているなと」


 モモちゃんは、監視カメラの映像を調べて貰ったそうだ。


「貰ったわけじゃなく、自分で調べたんだ」


 モモちゃんは威張りくさって言う。


「ど、どうやって?」

「部室のパソコンを使い、この図書館のLANに入り込み、セキュリティ会社に流れる映像をハッキングしただけだ。なにも難しいことはない」


 くい、くい。

 モモちゃんのメガネが、どうだと言わんばかりの冴え冴え強い光を放つ。
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