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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
  

 自慢げなところ悪いが――。

「ナツ……なにを言っているのかわからない」


 モモちゃんから小さく舌打ちの音が聞こえた。


「ん……とね、簡単に言えば、サクラは図書館のパソコンを遠隔操作して、部外秘である映像を、部室のパソコンから盗み見したということ」

「そ、そんなことできるの!?」

「サクラの趣味は機械弄りなんだ。開発も操作もプロ級で、小さい時から色々な会社からスカウトされるくらいに凄いんだ。今だってバイトでありながら、企画開発部で頼りにされているんだよ」

 ナツは自分のことのように嬉しそうに言う。


「へぇ、ウェイター以外のバイトもしているんだ? 企画開発ってどんなことを?」


 苦学生はバイトを掛け持ちしているらしい。


「それはね、しーちゃんを気持ちよくさせる機械作り」

「???」


 ナツはあたしの耳もとで囁いた。


「えっちなオモチャ開発。『イカサズコロサズ』『コダマクン』……実はサクラが作ったものなんだ」

「はいぃぃぃぃっ!?」


 ……どうしてあたしの周りのイケメンは残念で卑猥な男達ばかりなのだろう。なんだか委員長の気持ちがわかる気がした。

 モモちゃん……折角の高IQの才能、まっとうな道で使おうよ。


 モモちゃんは内緒話が聞こえていたのか、あるいは予想していたのか、腕組みをしてにやりと笑って言う。


「元はといえば、ナツの応援のために開発してみた試作品だが、バイト先に勤めるユリ姉が気に入ってな。とにかく実用的で販売できるものかどうか、ナツにモニターをして貰っていたんだ」

「どこなのよ、ユリが勤めるいやらしい会社は!!」


 未だ連絡つかぬユリ。

 現在のユリ情報はあたしは一切知らない。


「"cherry girls"っていう会社だ。創立して10年。一応は黒字続きの上場企業。ユリ姉は企画開発の部長職で、海外飛び回っている。今は家に戻っているのにまだ連絡とれてないのか。まぁ、凄く忙しそうではあるがな」


 "cherry girls"……?

 なんだろう、聞いたことがあるけれど……12年眠り続け、至ってノーマルなあたしが知るわけがない。気のせいだろう。


 ユリ、部長なんだ? ま、29歳だものね……。なんだかオープンすぎるあんたにうってつけの会社のような気がするよ。天職じゃないかい?

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