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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


 モモちゃんだけではなく、周囲の視線が痛い。

 ナツは容赦なく、むせるあたしの肩を前後に揺さぶる。


「しーちゃん、むせてる場合じゃないよ!? 僕は必死で真剣なんだから! 僕がどんなに夢見ていたかわかる!? しーちゃんの下のお口に……」

「わかった、わかったから! こんな人混みの中、大きくなったナツのモノを下のお口に挿れたいなんて、やらしいことを言わないで!!」


 こちらも必死で制すれば、モモちゃんの嫌そうな声が聞こえてきた。


「……おい。ナツはそこまでは言っていない。大声でわめくあんたの方が、どう見ても聞いても卑猥だ」


 おや……?


 周りの人達、不自然にあたしと目を合わせようとしない。

 カップルは、もじもじしながら指を絡まらせあっている。


 ………。

 ……穴、掘って……永眠してもいいですか。




 そして――。

 ナツは戦場に赴く兵士のように、悲痛な顔を無理に笑いの表情にして、あたしの両手をぎゅっと握りしめた。


 そしてうるうるした目で、さらには涙声で言う。


「必ず、強くなって戻ってくるから。また、必ず会おう!!」 


 そしてあたしに背を向けたと思うと、こちらを向き。

 背を正して真摯な顔にてすちゃりと敬礼して、モモちゃんと消え去った。



 ………。

 大丈夫かな、ナツ。


 ナツはどんな突飛な行動をしても様にはなるけれど、猪突猛進。

 妄想王子の頭の中には、今はどんな別れの場面なんだろうか。


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