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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 少しは打ち解けたと思うのに、既に着替え終って立っていたモモちゃんは、いつもにまして不機嫌そうだった。


 それなのに、どうしてこの男は見てくれはいいのだろう。

 不機嫌そうなメガネ姿もまた、クールさを強調させるただの材料。

 しかもあたし同様、水着の上に……あたしのとは反対色の黒いパーカーを羽織っただけなのに、纏うオーラが輝かしい。眩暈がする。


 そして気づく。

 モモちゃんがいつにまして不機嫌なわけを。


 あたしとモモちゃんのパーカーは、色違いだった。



「……なんであんたがナツのを着てくるんだよ」



 偶然お揃いであったパーカーは、あたしが着れば大きいのは仕方が無いにしても、細身で肌触りがよく、安物ではないことはわかった。

 胸にふたり同じロゴが入っている。


 どこかで見たようなロゴだ。


「これはナツがモデルしている店のもので、波瑠さんがお揃いで買ってくれたものだ。2点しかない限定品のレアものを……それをなんであんたが着ていて、俺とペアルックになってしまうんだよ……」


 ナツとはよくて、あたしとは嫌がるモモちゃん。

 本当に嫌で嫌で仕方が無いというように、顔を歪ませるモモちゃん。

 少しむっとして言った。


「じゃあ脱げば?」

「なんで俺が! これは波瑠さんが、ナツの誕生日にプレゼントしてくれた俺のお気に入りなんだぞ!?」


 バトラーに愛されている帝王様。

 高IQのくせに、バトラーモモは気づかないらしい。

 ……ナツの誕生日にくれたということは、あくまでモモちゃんは"ついで"なのだということに。


 まさに、愛は盲目。


「……じゃああたしが脱ぐわよ」

「やめろ! あんたその中水着なんだろ!? あんたを水着にさせたら、俺が後でナツになにを言われるか!!」


「水着の着用を必須とする施設で、水着を着ていてはいけないんですか」

「ああ言えばこう言う!!」


 ……今、あたしが怒られるところ?


 消去法でいけば、取る術はひとつ。

 あたしは、ペアルックでモモちゃんと歩くことになった。

 恋人でもないのに。

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