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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

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さっきから、不毛な会話だけが続けられている。
「ねぇ、モモちゃん」
「……モモちゃん言うな」
「じゃあクソメガネとどっちがいい?」
「……なんでその二択だ」
「可愛いじゃない、"モモちゃん"。あたし桃、好きだし」
「………」
「……なんでそんなに赤くなる要素あるの? モモちゃんは、桃嫌い?」
「……ちっ、そっちの方かよ」
「ん? ま、あんたはまったく美味しくないクソモモだけどね。ははは」
「なにか言ったか」
「ううん、なにも言ってないよ、モモちゃん」
「だからモモちゃん言うなって……」
「わかったよ、モモちゃん。ところで……折角目の前にこんなに面白そうなアトラクションが拡がっているのに、どうしてあたし達、ベンチにパーカー着て座って見ているだけ?」
「ひとりでどうぞ」
目の前には、老いも若きもはしゃいで滑りまくる"ウォータースライダー"。ぐねぐね曲がったトンネルのような滑り台が、かなりの高いところから始まっている。こんな巨大なもの、みたこともない。
タイヤチューブに乗って、ぐるぐる周りながら滑り落ちてくるのは、見ているだけで爽快で面白そうで、あたしなんてもう体がウズウズしてしまうのに、モモちゃんは一向に興味がなさそうだ。
「モモちゃん、あの女の人綺麗だね。こっちも……すごっ、超ビキニ。うわっ、ねぇねぇあっち、見て見て!すごいデカチチじゃない? なにあれ、初めてみた。リアル牛女! なにカップだと思う?」
「……黙秘」
「Gとか、Hとかかなぁ……?」
「………。どう見ても、あれは、内から詰め物で盛り込んだ偽物だ。左と右のバランスが……くっ、なんで俺までこんなエロ親父のような観察を」
「……今、自覚したようだけど、モモちゃんって意外に乗せられやすいよね。見て無いようでいて、しっかり見てるし」
「………」
「……はぁっ。あんな面白そうなアトラクション目の前に、ただこうして人間ウォッチングしながら、モモちゃんとお喋りしているのもなんかねぇ?」

