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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 



「それ、モモちゃんの情報網?」

「……あんたと初めて会った時、あんたは当時小学生の俺のメガネを無理矢理奪い取って言ったじゃないか! "○び太の目が3じゃないなんておかしい"って!」


 ……モモちゃん、ぷりぷりしてる。


「それ……ユリと宿題してた時?」


 そんなことしたっけ?

 一方的に、チビモモちゃんに喧嘩ふっかけられた記憶しかないや。
 

「違う。あんた、俺との思い出……まさか1回きりだとか言わないよな!?」

「え、その前あったの?」


 モモちゃんは涙目になった。


「もういい。馬鹿女なんて、もういい。あれだけのことをまだ幼い俺にしておいて、記憶ないなんて……」


 はて?


 あたくし、子供など虐めた記憶はないのですが……ね?



 昔のことを語ってくれないモモちゃん。

 せっつくうちに、ウォータースライダーの順番まであと僅か……というところまで、階段を上ってきたようだ。


 ちらちら、ちらちら。

 お姉様達の視線が痛いこと。


 それを平然としているのはモモちゃん、メガネをとったから見えないのだろうか。


「……俺は裸眼で、両方0.3。近くにくれば見える」


 また微妙な。


 あまり遠くを見えないモモちゃんだけど、遠くを見ようとしたその目は、やはり3の形にならず密かに落胆。


 なにも口にしていないのに、しつこいと怒られてしまった。

 微妙に見えてしまう0.3、油断も隙もない。


 やがてモモちゃんが言った。


「……これ、ふたりひと組って……まさかあのタイヤに……」

「じゃないの? 後ろのひと抱きつくようにして、ひとつのタイヤチューブで落ちてきてたから。大きいから窮屈ではないよ?」

「………」

「それからさ、知ってた? 滑り台から下の温泉にどっぽんと落ちる瞬間、写真撮ってくれるんだって。ホテル宿泊者様の特典だっていうから、さっき頼んできちゃった」

「はあ!? 俺のメガネを渡してきただけじゃないのか!?」

「すっごい写真、とって貰おうね!! モモちゃん前ね」

「却下!! 密着した写真など……っ」

「密着が問題? 問題は表情だって!! ナツに見せてあげなくちゃ」

「見せたら、問題だろう? 密着……あんなに密着……っ」
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