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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

「――くっ!! モモちゃん、あたしは負けない!!」
あたしは涙目で、モモちゃんにびしっと指をつきつけた。
「モモちゃん、あっち行くよ!! 写真は1アトラクション、2枚ずつ!! 絶対、モモちゃんが驚く程の美撮りされてやるんだから!! シズルお姉さまのお色気ムンムン写真を残してやる!!」
「……だから死語はやめろって」
と、モモちゃんの意見はやはり耳を貸さずに、意気込むあたし。
とにかくこの施設内のアトラクションは、カップルを基本としているのか、ふたりひと組にて密着させてなにかをさせる。
係員さんに指示される度、初々しく真っ赤な顔で狼狽してくれるモモちゃんが実に新鮮で、それを見てにやにやからかって遊ぶあたしの余裕はそれまで。
実際にくっつかれた後、モモちゃんの感触にいまだ慣れずに狼狽えるのはあたしの方で、結果――。
「……うう、ううう……っ」
キャーキャー騒ぐスライダー系は全滅。
最後の写真は、目を見開いたまま引き攣った顔をしたあたしが、必死にそれ以上崩れいく顔の輪郭を、なけなしの意志の力で必死に踏み留めているというのに、モモちゃんが爽やかスマイルにて後ろからあたしの鼻をブタさんのものにしてくれた。
「これがマシなのに。これが唯一マシなものだったのに……。あんたあたしの顔になにをするのよ!!」
「より素の顔に近い顔にしてやったんだ。しっかし、くくく……」
「……なんであんたはいつもカメラ目線でいい顔してるのよ。モモちゃん、今度はあんたが前になりなさいよ!!」
「却下」
それだけはモモちゃんは譲らない。
駄目だ。
くっついて落下系は、あたしは惨敗すぎる。
ならば――。
あたしの目に入ったのは、『流れる温泉プール。※時間により波のプール、混合プールに切り替わります』の看板。
それは海でも意識しているのか、まるで露天風呂のような雰囲気で、大きな岩に囲まれている。
長さにして25mくらいか。
これだ!!
これであたしの偉大さをモモちゃんに見せてやらねばならぬ!!
大和魂に、火がついた。

