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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


 もう起こしません、こんな事故。


 いいか、シズル――。

 波を怖がるんじゃない、相手はナマハゲじゃないんだ。

 ナマハゲの方がよっぽど恐ろしいんだ。


 地上に出てまず波の衝撃に耐え、落ち着け。

 敵は重みがあるとはいえ、ナマハゲじゃない、ただの水だ。

 手には包丁なんて持っていない。


 落ち着け、落ち着け。


 あたしのこの両手で波を掻き分け、そしてぱっと移動するのだ!!

 ナマハゲを振り切るより簡単だ!!



 ……そう、"三度目正直"避難の成功を信じて、モモちゃんといざ地上へ。



 相手は所詮水、そう思っていたのに――。




 ――今度はなんで、



「きゃはははははは」



 波と共にチビが真上から降ってくる!!!

 水だけでいい、水だけで!!


「どっぽーーーん」



 大波に浚われて喜ぶ、横に大きい幼女のヒップアタックを受けたあたしは、お約束のようにモモちゃんに倒れ込み、


「……っ!?」

「な……っ!!?」



 モモちゃんとちゅう。

 3回目のちゅう。


 三度……というものは、"三度目正直"ではなく、"二度あることは三度ある"……の慣用表現の方が正しかったらしい。

 しかも頭部にのしかかってくる重りのおかげで、あたしの唇はモモちゃんから離れないまま、チビごと水中に逆戻り。


 今までで一番長いキスだったからか、あるいは三度目で慣れでもしたのか、絡み合う視線は驚愕や狼狽を超えて……なんだか互いの反応を窺っているような妙に落ち着いた気分で。


 それはモモちゃんも同じだったのか、まるで時間が止ったかのように、あたし達はキスをしているという自覚をもって、互いを見つめていたと思う。


 水面で散らばる互いの髪が、お互いの顔を撫でるように揺らめき、それに伴い……モモちゃんの手に力がこめられ、ぐいと引き寄せられたような気がする。


 そして――。


 モモちゃんの目が真剣な光を持って、"オトコ"の覚悟したような目になった。

 それはモモちゃんの艶となりゆく――。



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