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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


 そうなったら。

 そうなってしまったら。


 あたしの体は意志とは関係なく、まるで魔法にかかったかのように、唇だけが自然と動いてしまうんだ。ゆっくりゆっくりと……開いてきてしまうんだ。


 そしてモモちゃんは。


 少し苦しげにぎゅっと目を瞑るようにして顔を傾け、舌で薄く開いたあたしの唇をこじ開けてきて――。


 ああ、なにかが入ってくる。

 意識がふわふわする――。



「げほっげほっげほっ……え、なにここ!? 岩間!? 瞬間移動!?」


 気づいたら、波の被害が及ばぬ岩間にいたあたし。


「瞬間移動のわけないだろう? あんた……白目剥いて訴えてきたじゃないか。酸素不足で苦しいって。溺死して怨霊になりましたなんて、シャレにならないから。怨霊は写真だけの中だけにしてくれよ……」


 ……モモちゃんはあたしにディープをしかけてきたわけではなく、ただ救助用に酸素をわけてくれたらしい。


 意識がふわふわしたのは、モモちゃんからの積極的なキスにくらくらしたわけではなく酸素欠乏のせいであり、モモちゃんは酸素をあたしに与えながら、チビちゃんの尻を押し上げ……そして波の被害が及ばぬところまで、意識朦朧としているあたしを運んでくれたようだ。


 本気か救助かも区別つかないあたし。

 こんなんだから、ハル兄の"治療"も本気に思えちゃうんだ。



「モモちゃん」

「なんだ?」

「3回もモモちゃんの唇奪ってごめんね?」


「――っ!!!? な、なんであんたはそういうことを!!?」



 モモちゃんは真っ赤で、手で唇を隠している。



「ファーストキスだった?」

「な、ななな!?」


 この乙女のような初々しさに、ちょっと悪戯心。



「どんな味した? いちごの味!? 甘酸っぱいレモンの味? それともリアルに温泉の鉄の味とか?」


 にやにや、にやにや。


「違っ……納豆……っ」

「納豆? あたし食べてないよ?」

「い、いやそれは……」


 モモちゃん、はっとした顔。


「なに……まさか賞味期限が過ぎすぎて、腐っているとかいいたいの!?」

「違うっ!! ウチに泊まったあんたが酔っ払って冷蔵庫の納豆食べながら、俺の両親の夜の情事を目撃して勝手に興奮して、偶然通りかかった俺のファーストキス奪ったんだよ!!」


 はい?

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