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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 



「その時だけでいいから……俺を"特別なオトコ"に考えてくれないか」



 モモちゃんが少し離れ、真っ正面からあたしを見た。

 乱れた髪の中から気怠げな表情がある。

 だがその眼差しだけは真剣で、夏の陽射しのようだった。


 黒い瞳には冷ややかさはなく、逆に熱く滾っていた。


 こうした瞳は知っている。


 それは欲情した男の瞳。

 一心にあたしを欲しいと訴えている瞳。


――シズ。

――しーちゃん。


 モモちゃんの瞳の奥に、炎になりきれない火種が見える。

 その熱気が煙のよう立ち上り、モモちゃんの瞳をゆらゆらと揺らす。


 どこかぎこちなく。

 どこか発火不足で。


 だけど確実にその熱を伝えてくる。

 きちんとした火にして、もっと燃えさせて貰いたいと訴えてくる。


 余裕めいた艶というよりは、それはモモちゃんの子供のような切望。

 子供の境界を踏み越えたいという……逡巡と渇望の葛藤。


 確実に、あたしの心は揺さぶられている。

 だけどあたしの体は動かない。



「なぁ……なんとか言えよ」


 反応がないあたしに、苛立ったようにモモちゃんの片眉が動く。

 やるせないような表情から、モモちゃんの艶が滲み出ていた。


 眩暈がする。
 


「……モモちゃん、女嫌いだったよね?」

「……ああ。触られるだけで気持ち悪い」


 心底嫌そうに顔を歪め、モモちゃんはあたしの頬に片手を添える。


「今、触っているよね」

「ああ、触っている」

「触るのは平気なの?」

「……無理」


 そして頬を撫でていた親指が、あたしの唇の上をもどかしげになぞる。

 同時にモモちゃんの視線があたしの唇に注がれた。


「……意味わからないよ。女嫌いのくせに」

「わかれよ」

「わからない」


 モモちゃんの顔が不愉快そうに歪み、あたしの口の中に親指が入った。

 モモちゃんの薄い唇が半開きとなり、悩まし気な吐息がそこから漏れたのを聞いた。

 ……まるで、モモちゃんがひとりで感じている扇情的な場面を、盗み見てしまったかのような背徳感にぞくぞくする。


 モモちゃんの視線があたしの視線と絡んだ。



「……あんたとのキスが忘れられない」




 モモちゃんは絞り出すように、辛そうに言った。

 
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