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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 
「だから……あんたの傍にふたりがいなくて、あんたが飢えてどうしようもなくなった時だけでいい。俺を……年下の憎たらしいガキじゃなく、あんたのすべてを愛せるただのオトコとして見てくれよ」


 悲痛さに掠れきったその声音が。


「あんたを抱くリスクは承知の上。だけど俺、あんたのために尽くすから」


 モモちゃんが、痛いくらいに強くあたしを抱きしめて言った。

 猛々しいモノが、存在を主張しながら。


「補欠でいい。あんたにすべてを捧げ…女としてのあんたの愛を貰える特別なオトコに、俺も入れてくれ。

あんたが呼んでくれたら、なにがあっても必ず駆けつけるから。だから俺を……あんたの心の片隅に置いてくれ。ほんの少しのスペースでいいから」


 胸が締め付けられる。

 心の奥が痛い。


 どうしよう……。



「――なぁんてな」



 モモちゃんはあたしから体を離すと、にやりと笑った。


「本気にした? おばさん」


 ……そんなに辛そうな顔をして。

 そんなに大きく勃ち上がらせて。


「ははは、なに困った顔してるのさ。冗談じゃないか。いつもガキ扱いするあんたへの、ささやかながらのお返し」


 冗談にしないでと、切実な光を瞳に宿しながらモモちゃんは笑うんだ。

 だったら、あたしも笑うしかないでしょう?


「大人をからかうな!! この貧乳好きの玩具使い童貞っ!!」

「な、なんだそれは!!!」


 そう――。


 モモちゃんが望むのなら、笑える環境を作ってあげよう。

 それがいかに現実逃避の、空笑いの環境であろうと。


 モモちゃんの瞳から熱が沈静化している。

 意志的に抑えているのだろう。


――なかったことにしようとすると、体が引きちぎられそうになる。


 いじらしいモモちゃんに教えてあげる。


「あたしは、忘れてなんてやらないよ。

……緊急事態にはよろしく、桃」


 モモちゃんの辛い想いを流してやるものか。

 だけど、受け止めるわけにもいかない。


「モモちゃんは、あたしの一番の……舎弟だよ」


 それだけは、わかって。


「なんか言ったか?」


 思いきり足を踏んづけてきたから、あたしもやり返す。

 モモちゃんの大事なところにグー!!


「!!!!!!」


 ……それがショック療法となったのでした。

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