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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

……このひと、息継ぎしないで一気に早口で言い切ったよ。
これだけ饒舌なのに、どこが口下手なんだろう。
本人が自覚していないだけで、こいつは口から生まれてる。
真っ赤な顔で、まったく想像していないと言い張りますか。
どこまでも君は、加虐心をそそるツンデレくんだね。
あたしに対してはツッコミ役だというのに、もしかして彼もまた、ツッコミをひたすら願い続ける……構ってちゃんなんだろうか。
ならばこのシズルさんが、可愛いモモちゃんを構ってやろうじゃないか。
「あらいやだ、真っ赤な顔でなにをどう想像するって? 初恋の綺麗なお姉さん相手にあんまり興奮すると、せっかく収まったところがまた元気になっちゃうわよ? このお・ま・せ・さ・ん」
背伸びしてモモちゃんの頬を人差し指で軽く叩くと、モモちゃんはさらに赤くなってその場で顔を両手で覆って蹲る。
「初恋……なんでこんな女に……俺、~~くっ!!!」
……"初恋"より"綺麗"の方を強調させた効果はなかった。
しかも初恋を後悔しているようなのが微妙に気にくわない。
今さらだが、モモちゃんはあたしが口にする下ネタに弱い。
元々下ネタは、目覚める前からハル兄やユリが明け透けだったために、然程抵抗はない。……まあ、程度によりけりだが。
あたしはモモちゃんにそこまでおかしなことを言っていないつもりだが、なにせ目覚めたあたしは、あの常識が通用しない卑猥兄弟に染まりっきりだから、無意識の所作にも卑猥さが伝染しているかもしれない。
だからこそ、あたしはモモちゃんのピュアさが妬ましくも思うのだ。
真っ赤な顔をして、"きゃ~いや~"と悶えていたあたしの時代は、遙か彼方に終ってしまった。それを19歳の美少年が今でも持ち得るというのは、ある意味モモちゃんは純粋培養された天然記念物で珍しい。
……まぁ、それ以外は嫌味と皮肉の塊ではあるが。
しかし――。
あんなに卑猥な帝王に師事をして、あんなに変態な王子を友にして、あんなに淫猥な玩具を作るくせに、どうしてここまであたしに真っ赤になるのか。
本当に不思議なモモちゃんだ。
そんな時だ。
ずるり。
「――あ、やばっ。今の背伸びで、下……ずり落ちてきた……っ!!」
「な!!!」

