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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

「なんだかよくわからないけど、すごい人気なんだね。cherry girlsっていうのは、ユリの勤めていて、モモちゃんがバイトしているえっちな会社でしょう? まあ、この施設のスポンサーであるのなら当然として」


 "サイズは選べられます"

 一体どんな新製品だかはわからないけれど。


 走る群衆の声には、間違いなく"Dangerous Scent"と"フィギュア"の声も上がっていた。


「Dangerous Scentって、なに? 有名なの?」


 するとモモちゃんは、静かにあたしを指さした。

 正しくは、あたしが着ているモモちゃんの黒いパーカーのロゴを。


「………。ま、まさか……」

「そのまさかだ」


 モモちゃんは、ため息をついてあたしに言う。


「じゃあフィギュアって……。等身大裸体って……」

「……前に言われたことがある。バイト先で、シリコンで型をとられたって。あいつ……イメージモデルだから、デザイナーが作る服のイメージに使われるんだろうと笑っていたけれど……」


「……じゃあなに。本人は知らないの、賞品になっていること」

「多分な」



 怒りがふつふつと湧いてくる。

 一体だろうが二体だろうが、数は関係ない。

 仮にそのブランドがここのスポンサーで、場を盛り上げナツを売り込むための策略だったとしても、関係ない。


 ナツが。

 あの可愛いナツが。


 狂暴な色欲魔の餌食になってしまう――!?



「モモちゃん」

「ああ」



 あたし達は堅い握手を交した。



「ナツの裸体を取り戻しにいこう。

ナツの貞操を守るんだっ!!」



 ナツのために、即席カップル結成!!

 

 そして――。

 水着のことなどすっかり忘れて、先着30組に入れるようにモモちゃんと全速力で駆けた。



 そんなあたしは、ポスターの片隅に描かれている……この施設のマスコット"ゆ~ちゃん"の吹き出しの文字を見ていなかったのだった。



『本日、"Dangerous Scent"のデザイナー片倉遊佐さんも登場』



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