この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

長い睫毛がふるふると震えている、初々しいピュアボーイ。
やばいよ、お姉さんきゅんきゅんきちゃったよ。
「すごく嬉しいのに……」
モモちゃんはあたしの手首をがしりと掴むと、顔をそらしたまま……自分の左胸にあたしの手を触れさせた。
どくどくどく。
モモちゃんの鼓動は凄い早さだ。
「どうしても俺には、不可解な情動がある」
接触を嫌がるモモちゃんが、積極的に接触を試みているせいなのか。
手を引こうとしたけれど、モモちゃんはそれを許さない。
「なぁ。俺のここが……ぎゅっと苦しくなるのはなんでだろう。頼られて嬉しいのに、苦しくなるんだ」
依然、自分の胸にあたしの手を触れさせながら、口から離した片方の手で……あたしのパーカーの裾に指先をかけ、あたしを見た。
「それだけじゃない。我慢……できなくなる」
切ないほどに真摯な表情に浮かぶのは、戸惑いに揺れる眼差し。
それをきゅっと苦しげに細めてモモちゃんは言った。
「あんたに……触れたい」
まるで欲しいものを強請る子供のように――、
「この服の下の肌に……触れたい」
裾を引っ張る指に力が入る。
「いつものようなガキとしてではなく、あんたを守れる男として、あんたが俺を頼ってくれるのなら、そんな"女"のあんたに……触れたい。
触れて……ああいう顔をさせてみたい」
「ああいう顔……?」
「ナツや……波瑠さんと一緒の時のような、あんたが感じている顔」
「は、はい?」
「俺の玩具を使った時も、あんな顔だったのかとか色々考えてたら……止らなくて。緊急時限定でいいと言ったばかりなのに……だけど今、それが無性に嫌で。必要とされるのなら俺でもって、欲が止らない。俺、なんか変だ。どうしよう。あんたに触れたい」
揺れて揺れて、なにかが零れ落ちそうな熱の滾ったモモちゃんの瞳。
「……触れたい、触れたい」
絞り出すようにモモちゃんが訴えた時、開始のホイッスルが鳴り響く。
「時間……切れだ」
モモちゃんは泣きそうな顔で笑い、項垂れた。
そして――。
「行くぞ」
あたしの片手を引いて歩き始める。
「ナツ……早く帰ってこい。このままだと俺……」
戸惑うあたしには、哀切に響く独り言は聞こえなかった。

