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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 


 休憩時間は5分。時間制限ぎりぎりでトイレから戻ったモモちゃん、むくれてしまい……あたしとお話してくれない。

 少しばかり憔悴した顔。

 だが、心配したあたしが触れようものならがぅっと噛みつかんばかりの勢いで振り返り、まるで手負いの獣のように獰猛だ。

 それなのに顔は真っ赤。うるうるのお目々に、ふるふるの睫毛。

 狼の皮を被った子羊ちゃんが、必死にあたしを威嚇している。


 そこまでトイレの駆け込みは恥ずかしかったのか。

 その件には触れて貰いたくないと、全身で「来るな」オーラが凄まじい。


 ナツの場合、切羽詰まった顔でトイレに行き、嬉々とした顔で戻ってくるから、男にとっては気軽に触れてもいい話題だと思ったのだけれど、明け透けなのはナツだからであり、モモちゃんは違うらしい。

 さすがはピュアボーイ。
 
「仕方が無いよ、モモちゃん。それは自然現象だって。男の子の生理現象。だって初恋の綺麗なお姉さんのノーパン、触ったんだから」


 かなり訳知り顔のお姉さんぶって、勇気づけるように言ってみたら、


「……初恋より卑猥なお姉さんだろう、あんたっ!!」


 やはり三度目も、"綺麗な"は見事にスルーされた。

 
「もうあんたを見ないことにする」


 モモちゃんはふて腐れたようにメガネを外してしまった。


 ……ノーパンの感触と視覚はなにか関係あるのだろうか。

 あたしが馬鹿だからなのか、モモちゃんの頭がパニクっているからなのか、よくわからない。


 メガネを外したモモちゃんへの観客達からの熱視線は、3割増の気がする。

 女嫌いのモモちゃんは、あたしを意識しないために、大勢の女達の視線を受けているが、それは平気らしい。


 このまま行けば、モモちゃんの女嫌いは(気にならなくなって)消えてなくなるか? もしかして、あたしはモモちゃんの女嫌いの克服に一役買えるのか?


「あたしって、モモちゃんにとって幸運の…綺麗な女神様だね!!」


 男女別で2組にわけられた時、別れ際に鼻息荒くそう言ったら、


「幸運の……女神!?」


 モモちゃんよろめいて転倒しそうになって、思いきり遠くから睨み付けられた。

 四度目の"綺麗"も無視されたが、幸運の綺麗な女神様は、それを微笑ましく見ていてやらねば。


 むっふっふ。

 
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