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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 

 あたしの顔は一転して、ぱぁーっと明るくなったに違いない。

 悩みまくるモモちゃんと目があったから、あたしは余裕でばっちんとウインクを送った。


「………」


 モモちゃんは、ラブラブカップルにはあるまじき嫌悪感を露骨に顔に出したが、あたしが先にこの難問を解決できた理由を探っているようだ。

 そしてさらに嫌な顔をした。

 ……初体験相手を誰にしようとしているのか悟ったのだろう。


 それは驚愕と言うより、諦観が色濃く出ていたから……モモちゃんもまた、予想の範疇にはあったのだろう。それを選択していなかっただけで。


 これいいよ、だってあたしとモモちゃんに共通して、今ちゃんと具体的に書けそうなオトコとオンナなんてあたし達しかいないのだから。

 モモちゃんのプライドにかけて、虚像のオンナや実姉を嘘でも相手にしたくないだろうし。仮にあたしの初体験の相手がモモちゃんではなく、彼の知るハル兄かナツかにしていたら、どちらにするか絞る時点でまたその選択に頭悩むのなら、ここはモモちゃんの純愛を叶えてあげた方が大団円。


 ほらモモちゃん、初体験の相手は、初恋の綺麗なお姉様ですよ~。

 そのお姉様の相手も、モモちゃんですよ~。


 ちゅうもしたあたし達、体も繋がったピュアピュアカップルですよ~。


 にたり。


 笑ったあたしを見て、向こう側のモモちゃんはさらに頭を抱えている。

 ……なぜ喜ばぬ?


「は~い、もう時間だからパネルに書いていってNE~」



 
『ペアの初体験の相手』


 そう書かれた質問パネルに、『初恋の綺麗なシズルお姉さん』と書き、ふと悩んだ。

 幾ら言っても、"綺麗な"を言ってくれないモモちゃん。今度も望み薄かも。

 いい加減学習を覚えたあたしは、"綺麗な"の文字に横一線、泣く泣く取り消し線を入れた。


『初恋のシズルお姉さん』


 ぱっとしないけど。

 なんか満足しないけど。


 だけど無難だから、多分モモちゃんだってそう答える。

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