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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘

……とはいかなかった。
たったひとつだけ、違いがあったんだ。
『初恋のシズルお姉さん』←あたし
『初恋の綺麗なシズルお姉さん』←モモちゃん
「どうしてあんた、いつもくどいくらいしつこくわざとらしく言っているものを、今回に限ってなんでわざわざ消したんだよ!?」
「どうして!? それはあたしの台詞よ!! 嫌っている自分の名を"桃"とちゃんと書いたくせに、いつもスルーしてるあたしの言葉をここで使うの!? いつもちゃんと聞こえてたなら、ちゃんとそのまま言えばいいじゃない!!」
あたし達は向かい側から怒鳴り合う。
「ん~。綺麗か綺麗ではないか。同じシズルという名前の別人かもしれないもんNE~」
「シズルはあたしよっ!! ついさっき、モモちゃんと初合体したんだから!! あんなに初々しく頑張ってくれたモモちゃんが、別のシズルと合体してたなんてありえない!!」
嘘も方便、腰に手を当て憤り半分あたしは叫ぶ。
あたしは止らない。
無論真っ赤なモモちゃんなんて視界に入っていない。
会場からざわめきやら、なにか音がしたのも気づかない。
「それはおめでとう~。ちなみにハジメテ同士の感想は? 今痛くないの?」
セクハラもどき質問だと気づくことなく、あたしは答える。
「モモちゃんは愛ゆえに刻々と成長するの!! 痛みなんか感じないほどに、モモちゃんはうまくて凄くて、何度も何度も失神もんで、ぐりぐりぐりぐり……」
はて、妙な既視感が……。
「やめろってば!!」
モモちゃんが机を飛び越えてきて、あたしの口に手を塞ぐ。
ばきっ。
妙な破壊音が聞こえてきた。
なんだ? 誰かがあてられて壁に頭でもぶつけたのか?
「司会者。これは答えないといけないものではないはずだ!!」
ふがふが、ふがふが。
モモちゃん、鼻と口同時に塞がれては……。

