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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 
 つまりあたし達は、優勝どころか最下点。

 頂点を夢見た瞬間があっただけに、このショックは大きすぎた。

 悲しみ以上の憤怒が込み上げてきて、あたしは思わず四つん這いになったまま、だんだんと拳で床を叩いてしまう。


 悔しい、悔しい、悔しい!!


 ナッちゃん人形渡したくなかったから、卑猥な姿披露してまで頑張ってきたのに。ナツに誤解されながらも、ナツに絶対優勝するって言ったのに。

 …ナツ、あたしを信じて……(変なものモモちゃんに投げ寄越して)、合宿上で孤独な闘いを再開したのに。


 あたし、ナツとの約束果たせられなかった。


 あたしがナツを守れると思ったのは、自惚れだったのか。

 あたしはそんな力もない、非力な女だったのか。


――しーちゃん。僕、信じてたのに……。

――しーちゃん、僕、待ってたんだよ。

――しーちゃん……。


 ああ、ナッちゃん人形から、しくしく声が聞こえてくる。


 それと同時にどこかで……、誰とは言わないけれど、たとえば昔から隣に住まう卑猥な魔王じみた兄弟(特に兄)の声もどきが聞こえてくる気がする。


 "がははははは!! このアホタレ"


 脳裏に再生されるは、昔昔の小学生の運動会。

 徒競走は得意ではなかったあたしが、事前に……耳にした情報によれば、1位になれば小学校一イケメンと噂された6年生の先輩が旗を持って出迎えてくれるらしいことを知った。

 2位は逆にブサメンと名高いやはり6年生、3~5位はフツメンという顔ぶれに、やはりどうせゴールして出迎えてくれるのなら、プロサッカー選手になるかもしれないと噂される1位の先輩がいいと、幼心に思った。

 そこで毎朝たらたらとランニングという名のスキップをして、あたしなりに頑張っていると、向こう側からハル兄が歩いてきた。


 今思えば、ハル兄のほっぺに口紅の痕があったから、ちょうど朝帰りだったんだろう。近頃新しく出来た友達と遊ぶのが多くなって、夕方もハル兄と顔合わせが少なかったから実に穏やかな生活を送っていたのだが、その再会であたしの生活が一変した。
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