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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

――お前、この朝っぱらからなんだ、家出か!? それともその歳で、男を誘惑して歩く魔性の女に目覚めたのか!?


 なにやらあさっての方向に勘違いするハル兄に、面倒臭いなと思いながら、あたしは運動会の徒競走で1位になりたくて朝練をしていると告げた。


――世間は物騒だし、俺様が教えてやろう。毎朝5時にお前を叩き起こしに行くからな!! ……そうだ、この際、浮気三昧に走らせる邪魔な"虫"退治をしてやろう。学校から帰った後も特別指導してやる。俺様が毎日、送り迎えしてやるぞ。

 あたしが幾ら拒否しても、無意味な抵抗に終えるいつもの如き強引グマイウェイ。

 ハル兄が本当にあの例のバイクを学校の正門に着けるから、折角できた友達も逃げていった…過去。


――あ? 素人のコーチが不安!? だったら見てろ。俺様の走りを!!


 当時金髪のハル兄が見せた手本は、まるで金の獅子のごとき圧倒的な早さと美しさで。修羅場逃げ慣れた成果とは思わず、その格好よさに騙されてサバンナ育ちのハル兄を信じ切ったんだと思う。

 無駄に、外見と運動神経がいいために、あたしもハル兄にころりと騙された…馬鹿な女だった。小学生であったにしても……。

 とにかく、本当にハル兄は凄いひとだと思ったんだ。

 このひとについていけば大丈夫だと思ったんだ。……懲りずに。


――あたしハル兄についていく。絶対1位とるからね!!

――おう、まかせとけ!! これからは朝起きたら真っ先に俺様と会い、学校でも男と喋らず、まっすぐに俺様の元に来るんだぞ。夢の中も俺様と一緒にいるんだぞ!?

――わかった!!


 それから――。

 別に陸上目指すわけでもないのに、スタートダッシュを何度もやらされ、姿勢を矯正され、しかもストップウォッチ持参で秒コンマの幾つかの世界に引きずり込んで、何度も走り込みをやらされて。

 そして運動会当日。別に言う必要もないから言わないでいたあたしが、1位の先輩のイケメンぶりにほくほくして、なぜ1位を取りたいのか真相を初めて告げた。


――ハル兄。絶対あの格好いいお兄ちゃんとお手々繋いで帰るからね~。ハル兄のおかげで、すっごく嬉しい思い出になるよ!

――は!? あのにやついた小坊主に手を引かれたいためだけに、毎日のデートにほくほくしてた純情な俺様を利用したのか!!
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