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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「……よせ。あのひとは無敵(チート)で伝説(レジェンド)だ」
モモちゃんが真剣な顔で、怒り任せでいるあたしの無謀さを諭した。
おお…。魔王のブラック歴史が輝いている――。
その圧倒的な"結界"に、愚民はまたもや泣き寝入りというのか…。
「くっ……」
あたしは歯を食いしばって、悔しさを表現。
だんだん、だんだん。
床に拳を叩きつけながら、ふと思った。
「……モモちゃん、魔王とは誰を想像したの? あたし誰とは特定して言ってないよね?」
「勿論……違うのか? え、俺の勘違い? い、言うなよ、あんたが魔王と思っていないのに俺だけが魔王と思っていたなんて……。そ、そんなことないからな。波瑠さんは悪魔系というより、俺にとっては……」
涙目で、あたふた言い訳するモモちゃん。
若干ツンデレっぽい発言を織り交ぜたモモちゃん事情を無視して、打倒魔王に燃える淫魔兼勇者シズルは、レベルアップを心に誓う!!
そんな覚悟を脇に押しやったのは、視界にナッちゃん人形が貰われていく姿を見たからだった。
ナッちゃん人形がこっちを見ていた。
――しーちゃん……。
「ナッちゃん……。不甲斐ないしーちゃんを許して……」
――しーちゃん……。
あたしは四つん這いのまま、まるでゴキ○リの如く四肢だけをしゃかしゃか動かして、ナッちゃん人形を手にして嬉しそうなお婆さんの足を掴んだ。
「お婆さん……。お願いです。どうか、どうか……。ナッちゃん人形を大切にして上げて下さい……」
ぐすんと鼻を啜りながら。
「ナッちゃん人形は寂しっ子で甘えたがりなんです。だから愛情を注いで、そしてあまり扱き使わないで下さい……」
わなわなと震える唇を噛みしめ、土下座する。
「あたしの代わりに、どうかナッちゃん人形を、愛してやって下さい」

