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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

そんな時だった。
「損得ない、無償に注ぐ純愛。私は、こういう……純粋な愛の姿を見たかったんです!!」
そう嬉々たる声を出して立上がっていたのは、アダルトナツ――。
よくわからない言葉の羅列に、あたしの意識が彼に向いた。
"こういう"って、どういう?
今、誰かアダルトナツを満足させる純愛劇を繰り広げた人達がいるの?
そう思ってあたしは依然四つん這いのまま、きょろきょろあたりを見渡したが、アダルトナツを始め周りはあたしの方を見ている。
後ろを見たがそこには空間ばかり。
もしかして隣のジジババの、ナッちゃん人形に対する愛情?
そうか。
あたしがジジババに人形をよろしくお願いしたから、だからあたしの方が目立っちゃっているんだ。
そうか、そうか……。
と思っていたところ。
「本気にNATSUを愛してらっしゃるんですね」
ナツと同じ顔をして、まるで自分のことのように嬉々たる顔で告げたアダルトナツ。彼がまっすぐな瞳で告げたのは、ジジババではなく、あたしだった。
あ、愛してる?
ジジババに土下座している姿を見てそう結論したのなら、彼の言うNATSUはナッちゃん人形に対して、という意味合いだろう。
そこには、人形を可愛がるのが微笑ましいというよりは、マニアを超えた禁断の域での邪恋を指摘されている気がして、あたしは否定にかかった。あたしは人形を恋愛対象にする趣味はない。ナッちゃん人形に執着したのは、ナツそっくりだったからで……。
「人形をNATSU本人と混同したゆえの無償の懇願。人形すら本人のように愛おしく思う。…それがきっと、"素"の貴方が求める愛の形。NATSUこそが愛する相手なんです」
「は、はい?」
あたしが口にする前に、引き続きアダルトナツが断定的に口にしたのは、人形に対してではなく、生身のナツ本人に対するものだった。
「貴方は、NATSUを愛している」
二度もの断定的な熱弁は、あたしの世界を揺らがせた。
「NATSUを男として意識して、愛しているんです」
三度目の断言が――、
ナツが大好きで大切だと思っているあたしの心に染みこみ、愛という名の毒を注ぎ込んでくる。

