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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「しーちゃんも僕を愛してるんでしょう?」
これは……愛?
「僕を好きでたまらないって顔してる」
愛……、愛なんだ。
あたしは、ナツを愛していたんだ。
……だけど、なに。心に棘が刺さったような、ちくりとした痛みは…。
「しーちゃんは最初から僕だけだった。僕がいたからこそ、僕が親しい他の男に揺れただけ。だけどそれは"錯覚"。親近感から来るただの親愛の情。僕は気にしない。僕が欲しいのは、"真実の愛"だから。
しーちゃん、ここには僕しかいないんだ。誰にも邪魔されることはない。自分の心に素直になって。ねぇ、思い出してよ」
思い出す……?
また心がちくりと痛んだ。
「しーちゃんを愛せるのは、しーちゃんが愛するのは。今も昔も、僕だけだってこと……」
――しーちゃん、愛してる……。
ちくり、ちくり。
今も、昔も――……あたしは……。
ちくり、ちくり。
途端、世界が激しく揺れた。
「俺がわかるかっ!?」
あたしの両肩を掴んで必死に揺さぶっている、二の腕。
朦朧とした閉鎖的な世界に、皹を入れて割り込んで来たのは――。
「シズルさんっ!! 俺の声が聞こえるか?」
……ええと、誰だっけ。
――しーちゃん。
誰でもいい。
あたしはナツ以外、どうでもいいんだから。
「あたしは……」
こちらを見ているナツ。
動かないナツなんてナツじゃない。
もっと生きて動いて、あたしを見つめてくれる……愛おしいナツが。
そう、両手を拡げて笑顔で待っているナツが。
それが本当のナツなんだから。
ナツのところに、行かなきゃ……。
「行くんじゃないっ、シズルさんっ!!」
ナツが待ってる。
今も、昔も――……あたしは……。
「離して!!」
ナツとあたしは、
「"運命"なん――」
『――黙って聞いてりゃ、ふざけんじゃねぇぞ、ゴラアァァァっ!!』
大音量の店内放送がかかったのは、突然のことだった。

