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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「へ? ま、迷子センター?」
『だから俺は、俺様だと何度も言っている!! なにが俺俺詐欺だ、電話回線乗っ取り!? ハッキング!? 知るか!! ぐだぐだうるせんだよっ、黙って電話繋げたまま、呼び出した奴らと俺様を引合わせればいいだけだ。
…は!? 待ってられねぇ? それで迷子センターを名乗るなっ!!! 会えずに困ってる奴を助けるのが仕事だろうが。
…あ? 俺様が困ってるのがわからねぇだと!? ぶつぶつ文句をたれる暇があるのなら、人命救助に奔走する医者の手助けをしてみろってんだ、ゴラァァァァっ!!』
"GORAAAAAAAA!!!"
暴れる、キングコング出現。
……迷子センターに関係ある処から繋がっているというのは間違いないらしいが、迷子センター側の声は全く聞こえてこない。一方的すぎる怒声が響くのみ。
理不尽な理由で怒り心頭のキングコングには、どこにも困っている様子は見られず、むしろ困っているのは迷子センターの職員に思えて、実に気の毒すぎる。
「職員さんも迷惑電話なら切ればいいのに。というか、早く切って欲しい……」
「迷子センター側からは、"通話"を切りたくても切れない。今、暫定的に波瑠さんが使用しているスマホが回線を支配している。警察が動き出す前に、早く終息させないと、俺が密かにハッキングして回線ジャックしたのがばれちまう。…はぁっ、波瑠さん……あれだけ言ったのに、"マイク切り替え機能"のこと、すっかり忘れているようだ…。逆ハッキングされなきゃいいけど…」
密やかに暗躍でもしていたのか、やけに訳知り顔のモモちゃんは少しげっそりとした顔で、あたしの腕を掴んで走り出す。
そして――。
なにか思い出したかのように足を止めくるりと後ろを向くと、両耳を手で押えぽかんと口を開いたままの観衆が残る会場の中心にて、冷え切った顔をしたアダルトナツを一点に睨み付けた後に、にやりと笑って言ったんだ。
「お前に、このひとは渡さない」
そして、突き立てたのは中指――。
「Fuck You」
それはおよそ優等生らしからぬ悪態。

