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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
  




 建物内に響き渡る、ブチギレキングコングの怒声。


『俺はっ、お前らと仲良くお話してたいほど暇じゃねぇんだよっ!! 迷子は俺じゃねぇんだよ、お前らそこまで暇ならさっさとシズとサクラ探して来いっ!!』


 また、無茶難題を言い放っている。

 きっと人質とった立てこもり凶悪テロリストに説得するが如く、暴れるキングコングを少しでも宥(なだ)めようとした、対クレーマーに経験豊富な猛者でもいたのだろう。それが無駄で終わるどころか、火に油を注ぐ結果になるということを、せめて先に教えて上げたかった。


『3分以内にあのふたりが来なかったら、お前らも道連れにしてやる!! 覚悟しろ、ゴラアアアアっ!!』


 ハル兄に限っては、物理的に不可能なことを可能にしてしまう非常識さがあるように思わせる迫力が凄まじい。歩くリアルホラーファンタジーだ。


『どうやって俺様に食われたい!? 煮るか、焼くか、切り刻むか。それとも生きたままガブガブいくか!?』


 ああ、ハル兄……、野生に戻っちゃっている。

 なんでそこまでご機嫌斜めなんだよ……。


 恐いよ恐いよ、近づきたくないよ。


 だけど行かねば何人もの命が散ってしまう!!

 ファイトだ、勇者シズル!!


 その前に迷子センターに早く行き着かねばならない。


 走れ、走れ、皆を救うために!!



「早く通話を通常モードにしないと、いくらなんでも警察かセキュリティーが動き始める。その前に波瑠さんに切り替えて貰わないと…」


 焦るモモちゃん。

 駆けるあたし達。


 そしてようやく見えた目的地。


 "まいこちゃんはこちら☆"


 故意なのか偶然なのか、"まいご"ではなく"まいこ"表記。


 あたしはシズルでこっちはモモ、"まいこ"ではないが、いざ参る!!

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