この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「モモちゃん、まっすぐラストスパート!!」
「ああ!! しかしなんでこのひと、直線になるとこんなに足が速い……っ」
『カウントダウン開始。10、9、』
「「カウントダウン!?」」
もう少しでゴール、そんな希望をぷちっと指で潰すかのように、呼吸を根こそぎ奪い続ける地獄のカウントダウンが始まった。
「最後の最後まで気を抜かせない、波瑠さん……、さすがというか……」
「モモちゃん大丈夫、目の前にドア来た!! ……あっ」
ゴール直前、勇者シズルまさかの転倒。
「なんであんたはそんなにベタな動きするんだよ、ドアの前で転ぶなっ!!」
ぐすっ、わざとじゃないのに…。
『6、5……』
「あたしのことはいい、モモちゃん早く……」
「あんたがそこに転んだらドアが開かないんだよ。それに波瑠さんが待っているのは、あんただろうが!! ああ、くそっ」
『4、3、2、』
「いやん、モモちゃん。お尻触っちゃ」
「肩に担いでいるんだから、そこは事故だと目を瞑れよっ!!」
あたしをがばっと肩に担いだモモちゃん、耳まで真っ赤になりながらヤケクソ気味に、長い足でドアを蹴り開けた。
『1』
「ハル兄――っ!!」
あたしが叫んだのは、ぎりぎり1秒前。
『……セーフ』
その低音の一言に歓喜の声を上げたのは、あたし達ではなく、
「うおおおおおお!!」
迷子センターの職員の皆々様だった。

