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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

 

「モモちゃん、まっすぐラストスパート!!」

「ああ!! しかしなんでこのひと、直線になるとこんなに足が速い……っ」



『カウントダウン開始。10、9、』



「「カウントダウン!?」」


 もう少しでゴール、そんな希望をぷちっと指で潰すかのように、呼吸を根こそぎ奪い続ける地獄のカウントダウンが始まった。



「最後の最後まで気を抜かせない、波瑠さん……、さすがというか……」

「モモちゃん大丈夫、目の前にドア来た!! ……あっ」


 ゴール直前、勇者シズルまさかの転倒。


「なんであんたはそんなにベタな動きするんだよ、ドアの前で転ぶなっ!!」


 ぐすっ、わざとじゃないのに…。



『6、5……』



「あたしのことはいい、モモちゃん早く……」

「あんたがそこに転んだらドアが開かないんだよ。それに波瑠さんが待っているのは、あんただろうが!! ああ、くそっ」


『4、3、2、』



「いやん、モモちゃん。お尻触っちゃ」

「肩に担いでいるんだから、そこは事故だと目を瞑れよっ!!」



 あたしをがばっと肩に担いだモモちゃん、耳まで真っ赤になりながらヤケクソ気味に、長い足でドアを蹴り開けた。




『1』


「ハル兄――っ!!」




 あたしが叫んだのは、ぎりぎり1秒前。



『……セーフ』



 その低音の一言に歓喜の声を上げたのは、あたし達ではなく、



「うおおおおおお!!」



 迷子センターの職員の皆々様だった。
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