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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

「本来波瑠さんのとリンクさせるのはPCやスマホなどを想定しているから、腕時計はやれることが決まっている。今回やったのは、あのデザイナー……ナツもどきのマイクの周波数に合わせたんだ。あんたが丁度ナツと部屋に籠もっている間、近くにマイクがあったから。あの男がなにか喋ったら、それが波瑠さんのスマホにも流れるようにと」
「なんでまた」
「波瑠さんから警戒しろと言われていた上で、きっとあんたを抑えられるのは、ナツか波瑠さんだけだと思ったから保険だった。現に、あんたは……波瑠さんの声で元に戻った。あの甘ったるい愛の言葉ばかり述べてた催眠術から」
あたしの中ではナツがおいでおいでしていたけれど、そう誘発していたのはアダルトナツの言葉だということなのだろうか。
そしてそれを聞いたハル兄がブチギレてしまって……。
「だけどなんで迷子センター?」
「外線を使うということは余程"会わなくてはいけない"状況だからと。だったら迷子センターに繋いで貰い、"まいごをさがして欲しいんですが"の言葉で回線ジャックが始まる。どう使いたいかは波瑠さん側の操作になるが、今回はあんたがどこにいるのかわからないから、迷子センターから全館放送にしていたんだろうな。……さあ、繋がった。では」
「え、あ、イキナリ!?」
『シズ』
嵐の直前のようなその抑揚ない声に、心構えが出来ていなかったあたしは飛び上がり、自然と長年の鍛錬を見せつけるかのような、"土下座"を披露する。
なにを言われるのか。
どんな雷が落ちてくるのか。
びくびくびくびく、ただの愚民になりさがった元勇者シズルは怯えて縮こまる。
そして――。
『大丈夫か?』
かけられた言葉は怒りではなく、心配そうな優しい声だった。

