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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 


『片倉になにもされてないか? 身体も心も傷つけられてないか?』


 ねぇ、ハル兄。

 あれだけブチギレていたのに、そんな優しさ反則だよ。


 お仕事忙しいんでしょう?

 話している暇なんてないんでしょう?


 どうしてそんなに心配でたまらないって、震えたような声を出すの?

 いつものようにふんぞり返って怒鳴ってよ。


「大丈夫。モモちゃんが、一生懸命守ってくれたから」


『そうか。だったら後でサクラに褒美をやらないとな。俺の代わりに、サクラが活躍してくれたからお前は無事なんだから。ナツには会ったか?』

「うん。強化合宿、色々うまくいかなくて悩んでいるみたいだけど、ナツも頑張ってる」

『そうか。あいつの本懐、遂げられるといいな……』


 まるで消え入りそうな寂しい声。


『あいつ、お前と繋がることを夢見ていたんだから』



 そして沈黙――。



「ハル兄……」

『なんだ?』


「なんだか……」

『どうした?』


 艶のある低い声が、あまりに優しすぎて。



「泣けてきちゃった。うわあああああん」


『は!? なんで泣く要素が!? おい、シズ、シズ!?』



「うわあああああんっ、ハル兄、ハル兄……っ」


 哀しいのか嬉しいのかよくわからない。

 だけどハル兄がハル兄らしくないのが、あたしを情緒不安定にさせた。


 優しすぎるのが気持ち悪さを通り越して、切なくなったんだ。

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