この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美

『片倉になにもされてないか? 身体も心も傷つけられてないか?』
ねぇ、ハル兄。
あれだけブチギレていたのに、そんな優しさ反則だよ。
お仕事忙しいんでしょう?
話している暇なんてないんでしょう?
どうしてそんなに心配でたまらないって、震えたような声を出すの?
いつものようにふんぞり返って怒鳴ってよ。
「大丈夫。モモちゃんが、一生懸命守ってくれたから」
『そうか。だったら後でサクラに褒美をやらないとな。俺の代わりに、サクラが活躍してくれたからお前は無事なんだから。ナツには会ったか?』
「うん。強化合宿、色々うまくいかなくて悩んでいるみたいだけど、ナツも頑張ってる」
『そうか。あいつの本懐、遂げられるといいな……』
まるで消え入りそうな寂しい声。
『あいつ、お前と繋がることを夢見ていたんだから』
そして沈黙――。
「ハル兄……」
『なんだ?』
「なんだか……」
『どうした?』
艶のある低い声が、あまりに優しすぎて。
「泣けてきちゃった。うわあああああん」
『は!? なんで泣く要素が!? おい、シズ、シズ!?』
「うわあああああんっ、ハル兄、ハル兄……っ」
哀しいのか嬉しいのかよくわからない。
だけどハル兄がハル兄らしくないのが、あたしを情緒不安定にさせた。
優しすぎるのが気持ち悪さを通り越して、切なくなったんだ。

