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目が覚めたら。
第11章 鬼畜帝王が甘えました

 
 そして目の前に広がるのは――。


 海を遠景とした、大自然が見える大きな窓。

 佐伯家の居間の三倍はありそうな草緑色の畳と、花瓶に花が飾られている立派な床の間。テレビは大きい薄型が、壁に貼り付けられている。

 他にも襖がたくさん見えるから、押し入れ以外に部屋があるのだろう。

 真ん中にちょこんと置かれた重厚な茶色い卓と、向かい合わせに置かれた座布団の敷かれた座椅子。

 卓の上にはポットと湯飲み茶碗がおかれている。


 景色を見ようと、ハル兄の手を振り切って窓に近づこうとした時だった。逆に手を引かれて、襖に背中を押しつけられたのは。


 そして――。


「んんんんっ!?」


 荷物が放られる音がしたと同時に、あたしはハル兄に唇を激しく奪われた。

 今日会って何度目のキスだろう……。

 生理的な涙を流しながらそんなことを思っていると、唇を少し離したハル兄がギラギラとした目であたしを睨み付けるようにして言う。


「他のこと考えるなんて、お前随分と余裕かましてるなあ、おい」


 怒ってる?
 
 ええ、帝王様ご立腹!?


「俺は……お前のことで一杯なのに」


 身を屈め、至近距離で覗き込んでくるハル兄の目が、忌々しそうなぎらつきを強めて、あたしを威嚇するようにぎゅっと細められた。


「昨日から、俺の気を狂わせていた……責任とれ」


 苛立ったような剣呑な黒い瞳の奥に、物悲しげな光をゆらゆらと揺らして。あたしをじっと見ると、ハル兄はゆっくりと顔を傾けて近づいてきた。
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