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可愛いヒモの育て方。
第9章 夢
麻人が部屋を出て少しして、携帯が鳴った。電話だ。彩乃からだった。
「……もしもーし」
「あら、寝てた?」
「さっき起きたとこ」
私は苦笑する。寝起きだと、そんなに声が違うのか。
「何?」
「おかえり。旅行楽しかった?」
「楽しかったよー。彩乃にお土産あるよ」
「あら嬉しい。今日、空いてない? ご飯しない?」
「んー、今日は午後から閉店まで仕事。夜中なら平気だよ」
彩乃からのお誘いは珍しい。明日も夕方からの出勤なので、朝方まで話してても問題はなかった。
「それで大丈夫。いつものファミレスでいい?」
「うん。そん時お土産持ってくね」
「ありがと。仕事終わったら連絡して」
「はーい」
私は通話を切り、軽く首を傾げた。二日前も彼女から電話が来ていたし、連絡をマメに取るタイプでもないから珍しい。
何か相談ごとでもあるんじゃないかと、勘ぐってしまう。
彩乃は妙なところで頑固だし、そういう話は、直接会わないとしてくれない。相談事はメールや電話だと嫌だとかで。こちらから持ちかけた相談ごとは、電話でも付き合ってくれるけれど。