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可愛いヒモの育て方。
第9章 夢
「その報告のために、わざわざファミレス誘ったの?」
「……うん」
わずかな沈黙。
「気分、悪くした?」
「別に」
ただ、どうだって良かった。そんな話。
私はコーヒーを一口含む。
「なんだかんだで、忘れられてないでしょう? マサルさんのこと」
彩乃の視線は、私を射るように鋭い。なんだか痛かった。彼女は昔から、人と目を合わせて話すのが得意な子だったんだなと、今さらになって思い出した。
「何言ってんの、そんなわけないでしょ」
私は彩乃の言葉を笑い飛ばした。
「もう顔も覚えてないんだよ? マサルのあとに何人も付き合ったし、だいたい、たった数ヶ月付き合っただけの男、引きずってるわけないでしょーが」
「引きずってるなんて言ってないよ。ただ、忘れられてないでしょ? 彼の言葉。付き合ったのはマサルさんが初めてだったかもしれないけど、片思いはしてたでしょ? 好きな男にのめり込むようなタイプだったあんたが、マサルさんと別れてから変わったじゃないの。それさ、あの男の言葉を忘れられないからじゃないの?」