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可愛いヒモの育て方。
第9章 夢
彩乃の言葉には、抑揚らしい抑揚がなかった。淡々と、同じリズムで言葉を紡ぐ。
「……何? 言葉って」
「俺のことは知ろうとすんな。どうせ別れりゃ他人に戻るんだから。そんなようなニュアンスで、拒絶するようなこと言われたんでしょ?」
そんなことまで、私は彩乃に愚痴っていたのか。なんだか笑えてしまう。
「言われたねー。まったく酷い男だよねー。幼気(いたいけ)な女子高生にそんな辛辣な言葉を投げつけるなんて」
声のトーンをあげ、わざとらしくため息をついてみせた。
「確かに覚えてるけど、そんなの別に、根に持ってないよ。つか、今はちょっとだけその気持ちわかるんだよねー。どんなに夢中になったって、いずれは冷めるよ、恋愛感情なんて。相手への興味も依存も、どんどん塗り替えられてくじゃん。彩乃も、冷められて別れたんでしょ? 前の彼氏さんと。恋愛にそこまで必死になる必要もない。私もそう思うよ。あいつの言葉に共感するよ。ぶっちゃけ、遊んでる方が楽しいなーって」
「ふーん」
ようやく彩乃の視線が私からそれる。尋問されているような居心地の悪さから、解放された気分だった。