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可愛いヒモの育て方。
第14章 就活
再び、私の体を拭く手が再開される。
「……どうせまた、忘れちゃうくせに。悪女」
言葉は酷いのに、麻人の声は優しかった。薄く目を開け反論しようとしたとき、脱衣所のドアが開いた。
「大概にしなさいよ、あんたたち」
首を回して顔を見なくてもわかる。寝起きの、二割り増しくらい低い彼女の声は、何度も聞いたことがある。
「彩乃さん……」
ばさりと、何かが振ってきた。大きいバスタオルだと、かなり遅れて理解する。睡魔とは違う。急激に意識が遠のいていく感じがした。
麻人と彩乃の声は聞こえてくるけれど、何を話しているのかまではまったく頭に入らない。彩乃がいつから起きてたのかとか、この状況を見られてどうするかとか、一切考えられなかった。
二人の声も、次第に遠のいていく。私はそのまま、眠るように意識を手放した。