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可愛いヒモの育て方。
第14章 就活

「どこまで覚えてます?」
「え?」

 急な問いに、食べていた手を止めた。
 麻人は私の隣に腰掛けて、私の顔を覗き込むように見てくる。距離が近くて、どきりとした。
 お酒をたくさん飲んだわりには、記憶はなくさなかったと思う。彩乃の隣でエッチなことをしたことも、一緒に風呂に入ったことも、そこでのやりとりも、倒れた時口走った、告白まがいのスキのセリフも、全て覚えていた。

「うーん、風呂で倒れるまで覚えてるけど、ところどころ記憶が曖昧かも」

 どうせ忘れちゃうくせに。麻人はそう言ったけど、忘れなかった。だけどあえて、そこには触れなかった。あんな、酒の勢いで言っちゃうなんて。今さらになって、後悔の念が襲う。

「ま、そんなもんすよねー」

 麻人は肩を揺らして笑った。
 それ以上何かを突っ込んでくることもない。いつも通りの淡白な反応は助かるけれど、少し寂しくもあった。麻人は私のあの言葉を、どういうふうに捉えたのだろう。

「彩乃……、起きてたよね?」
「そこ覚えてるんすか?」
「うん、ぼんやりとだけど。何話してたの? つか、彩乃の隣でエッチしてたのバレてないよね?」
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