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可愛いヒモの育て方。
第14章 就活
「もう、頭痛は平気ですか?」
「……うん。これって」
私の手はマウスを握っていた。ページを下へとスクロールさせながら、心臓の鼓動が徐々に速くなっていくのを感じていた。
「あんた、就職は地元でするって言ってなかった?」
だいぶ前の話だ。就活を始めたばかりの頃、気軽な気持ちで尋ねたことがあった。麻人は家を出る気はないから、就職もここですると言っていた。
「母親のこともあったんで、そのつもりだったんすけど……。やっぱ今の家出たくって。就活は、他県でします」
麻人の声は物静かで、淡々としていた。
「他県で就活するには、だいぶ出遅れてるんですけどね。合同説明会とかも、全然行ってなかったし。そんな感じなんで、しばらくバイトはがっつりお休みしますね。ごめんなさい」
困ったような笑みを含んだ声で、そう言う。私はスクロールする手を止めた。サイトに映し出されている、麻人がチェックしていた企業は、全部ここから遠い県にあるものばかりだ。
「……友梨香さんちも、しばらく来れないかも。家事大丈夫ですか? ご飯はまかないがあるからいっか。掃除とか洗濯、一人でもしてくださいねー」