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可愛いヒモの育て方。
第14章 就活
何かを取り繕うような、私の機嫌を取るような、そんな口調で麻人は続ける。
それが無性に、イライラした。
「平気。もう来ないなら、麻人の荷物全部持って帰って。服とか、参考書とかも。部屋、せまいんだよ」
麻人に背をむけたまま、それだけ告げる。胸のうちに湧き上がる憤りを必死に押し込めた声は、自分でも驚くくらい低くて冷たかった。それでも笑顔を取り繕う余裕は今の自分にはなくて、理不尽な憤りを麻人にぶつけてしまわないよう、唇をきつく噛む。
「……はーい」
麻人は手早く、自分のものを整理して、袋に押し込んだ。
「もしまだあったら、バイトん時持ってきてください。じゃあ俺、帰りますね。二日酔い、お大事にー」
いつもなら、麻人を玄関まで見送るのに、今日はそれもしなかった。アパートのドアが閉まる音を、背中で聞いていた。
パソコンを切って、ドアの鍵を閉めに玄関に行く。
すっかり暗くなってしまった部屋を見まわすと、麻人のものが置いてあったスペースだけ綺麗に空いていて、それにも無性に腹が立った。私が持って帰れって言ったのに。そんなことはわかってる。