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可愛いヒモの育て方。
第15章 喫茶店

私の視線がずっと彼女に向けられたままだったからか、彼女はわずかに不思議そうな顔をした。
「あのー……、どうぞ、お好きな席にお座りください」
「はい」
柔らかい笑み。私もその笑みに、営業用の笑みを返した。
カウンターの席が五つ。テーブルは六卓。出入口から見て左手の一番奥のテーブルには、スーツ姿の若い男が座っていた。ノートパソコンを見つめ、カチカチとタイプ音を鳴らしている。客はこの人だけらしい。
私は反対側の一番奥のテーブルに座った。
中も外と同様、白と茶が基調のお洒落な作りだ。ゆったりとした曲が、小音で流れている。
メニューを開き、何を注文しようか考えながら、視線はついマサルを追ってしまう。奥さんと何か話していた。私がここへ来たことを、彼はなんとも思ってないのだろうか。
彩乃にあのメモを渡していたのは、何か意図があってのことなのだろうか。
「決まったか?」
耳元で声。はっとして顔をあげると、マサルはテーブルのすぐ横にいた。
「……まだ」
まだ、メニューもまともに見ていない。
「なんかそわそわしてんのな」

