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可愛いヒモの育て方。
第15章 喫茶店

話。そのはずだった。何かを精算したくてわざわざここに来た気がするのに、どうしたらいいのかわからない。
黙り込む私に、マサルは軽く笑った。
「なんだっけ? あの子。彩乃とかって子。その子になんか言われて来たのか?」
「ねえ、こんなとこで話してていいの? 仕事中でしょ?」
「つっても暇だし」
確かに。客は変わらず私の他に一人だけだ。
「どこで会ったの? 彩乃と」
私はマサルの問いに答えず、こちらから質問を投げかけた。マサルに未練はなくとも、どこかで執着していることを、マサル本人には知られたくない。
「近くの駅でだよ。カオリと……ああ、嫁な。温泉に出かけてた帰りで、偶然彩乃ちゃんに声をかけられたんだよ。俺は正直、全然覚えてなかったんだけどな」
それはそうだろう。彩乃と会わせたのは、多分数回だけ。合わせたというよりも、高校が終わる頃、よく校門の前までマサルが迎えにきてくれた。それでガラス越しに、彩乃は何度かマサルを見ていただけだ。
それだけなのに、マサルのことを覚えていて、声までかけてしまうとは、さすがというかなんというか。

