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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ

 だからなんの躊躇もなく、麻人に電話を繋いでしまった。

「その電話は、お母さんからだったのね」
「はい」

 再び短い肯定。

「バイト中だったし、すぐに切ろうとしたら泣き出しちゃって。いつもならシカトしてたけど、俺の携帯みたいに何度もかけてこられたら、マズイじゃないっすか。営業妨害になっちゃうし。それで焦ったのもあって、怒鳴っちゃったんです。給料明細とか、店の番号が載ってるやつはみんな捨てたはずなんすけどね。ネットで調べたのかな」

 麻人はずっとうつむき加減で話していた。視線は向かいに立つ私の足元を向いている。トーンの変わらない、静かな声だった。
 私には、麻人が誰かに向かって怒鳴ったり、声を荒げるところなど想像もつかなかった。いつもヘラヘラ笑ってて、穏やかに話す姿しか見たことがない。
 そんな麻人が声を荒げるほど追いつめられていたのかと考えただけで、どうしようもなく胸が痛む。

「そしたら少しして、今度は病院から電話きて……」

 うつむいていたため、麻人の目は見れなかった。自嘲気味につり上がった唇が、わずかに開く。

「ーー手首、切ったって」
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