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第5章 肉欲の薔薇

エリカは瞳と自身を重ねる。
AVに比べたら、
この映画の撮影は、
裸になって過激なシーンを演じても、
見えそうで見えないように、
カメラワークされており、
セックスは一切ない。
気持ち的に楽なんだ。
精神的にも、
仕事でセックスをする罪悪感から解放されて‥‥‥

ただ、ストーリーの中に常に自分が居た。


平凡だった女子大生が恋をして、
愛にこたえる為に、タトゥーを彫る。
一人の男の愛に身体を犠牲にして、
愛を貫く。


女優になりたくて、
その犠牲にAVに身を投じた自分と似てるような気がした。

大切なものを手に入れるには、
犠牲が必要だった自分に‥‥‥‥

本間にタトゥーを彫られて、
苦痛にもがく瞳。

自分の境遇と重なり‥‥
涙が滝のように流れ出し、
嗚咽が漏れる。

監督は止める事なく、
カメラを回し続けた。

司馬役の卯月は一層強く私の手を握る。

「はぁ‥‥‥‥‥
先生‥‥‥‥‥愛してる‥‥‥」


私は流れる涙を頬に感じ、
目を閉じて、
ずっと下唇を噛み締めた。