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第5章 肉欲の薔薇

「はーいカット！」
遠くでシーンの終わりを告げる声がした。

私の涙はまだ止まらない。

司馬役の卯月が、
私に声を掛ける。

「エリカちゃん、
大丈夫？」

心配そうに見つめる瞳が優しかった。

放心状態になり、
暫く動けなくなった。

マネージャーの清水も心配そうに駆け寄る。
露木監督も私に駆け寄り、

「よしよし
良かったぞ エリカ！」
と頭をポンポン叩いた。


私は我に返り、
また涙が溢れ、
子供のように声を上げて泣いた。

清水がそっと着ていた上着を脱ぎ、
私にかける。


「暫く、休憩いいですか？」
と清水が監督に言ってくれた。


「構わんよ。
ゆっくりしてこい。
エリカ」

優しく言う。


露木監督やスタッフや卯月も
気を効かせてくれて、

私は清水と二人っきりになる。


撮影用の司馬の部屋で、
私は清水にしがみつき、
声を殺して泣いた。