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第3章 転機

　無想こと邦綱は少々風変わりな男で、剃髪してからは、家族から離れ、この庵でたった一人暮らしたといわれる。無念無想が座右の銘で、晴耕雨読―無想庵の周囲に小さな畑を作って自給自足の生活を送り、雨が降れば庵に籠もって写経や読経に勤しんだと伝えられている。
　雨は本格的な降りになったのか、外からは雨音がひっきりなしに聞こえてくる。