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第4章 花冷え

　あれほど自分に酷い仕打ちをしてきた男が、自分に恋慕の想いを抱いているのだ―などと言われても、徳姫には納得できない。
　愛するというのは、相手を思いやり、慈しみ大切にすることではないのか。相手が靡かぬのなら、力づくで組み伏せ、欲望のままに犯すのは、愛とは呼べないはずだ。
　それに、徳姫には既に心に想う男がいるのだ。
―蓮心尼さま、私はあなたの実のお子保邦さまをお慕いしているのでございます。
　そう言えたなら、どれほど救われることか。