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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
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▼斎視点



行きと同様、バスに揺られ帰ってくるやいなや「春くんと一緒に手を洗って、急いで来てください」とクロに促され、せっせと洗面所へと向かい手を洗った。

「手、洗ったけど・・・」

キッチンに行ってみると、クロは外出時の服は着替えており、白シャツに深い緑と黒の細かいギンガムチェックのズボンを着ていた。
これもまた、シンプルなのにオシャレに着こなしてしまっているのがクロの凄いところだ。

多分部屋着なんだろう――・・・初めて見る服装。

「クロ、なんで執事服じゃないんだ?」

春も同じことを思っていたらしく、俺と一緒に首を傾げた。

「斎様がリクエストした夕飯を3人で作ろうと思いまして」
「作る・・・?」
「はい」

クロは一旦ダイニングテーブルに置いていた大量の食品袋と、雑貨や実用品が入った紙袋などを整理しながら説明し始めた。

「斎様たちがリクエストした夕飯なら簡単に作れますし・・・・。
あと、デザートも作ろうと思っているので――」

クロは最後の一言を、なぜか俺の方を見て顔色を窺う様に言った。

「デザート・・・」

「春は何か知っているか・・・?」とふたつの意味を込め、隣にちらっとアイコンタクトを送ってみると、春は笑って「さあ・・・」と意味ありげに首を傾げただけだった。

「――というか・・・俺、料理・・・できないけど・・・」

デザートや意味ありげな対応は気になるが、一番引っかかるのは自分が料理が出来ないこと。

恥ずかしいことに、春が言っていた“斎は行き倒れるタイプ”はまったくその通りで、料理と言っていいかはわからないが、作れるのは卵かけご飯くらいで、洗濯は両親に任せっきりでしたことはない。
掃除は自室をするが、たいして汚れているわけでもないので本格的にしたことはない。
やっても、窓と床拭くか、本棚整理くらいだ。

そんな俺が料理は・・・・――失敗くらい見据えられる。

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