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ビターチョコレート
第5章 愛しさと背徳の背中合わせ。
ケーキセットが運ばれてきた。

アユはショートケーキとコーヒーのセット。

アユは迷わずいちごから食べた。

「ねぇ、マリちゃん。
恋心って、ショートケーキみたいね」

「どうして?」

「ショートケーキの飾りって、
いちごだよね。
でも、いちごがなくなったら、
飾り気のない寂しいケーキになる。
それでも私は先に食べるの。
大事ないちごを取られたくないから。
飾り気のないクリームとスポンジは、
いちごを食べた満足感と、
口の中に残るいちごの香りを辿れば、
美味しく感じるわ。
誰にも取られたくないなら、
最初に食べちゃえばいいのよ」

「いちごはヒロね」

「うん」

「マリちゃんのいちごはレンでしょ?」

「うん」

「さすがのアリサも、いちごのないショートケーキはいらないでしょ?」

「なるほどね。
アユちゃん頭いいわ」

「いちごの味は、
私が知っていればいいの。
甘かろうと酸っぱかろうと」

「そうね」

私はレンとのクリスマス前の情事を、
いちごを見ながら思い出した。

アユと違うのは、いちごを取っておくタイプだった。
ずっと存在を残したくて。
危機感があっても、最後まで持っておきたい。
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